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第8章 有馬記念 〜初の敗北〜


日付レース名場名 コース馬場人気(オッズ)着順騎手斤量タイム3F馬体重タイム差
05.12.25有馬記念(G1)中山 芝25001 (1.3)2武豊55.02.32.034.6440(-4)-0.1

過去に日本の競馬史における無敗の三冠馬はシンボリルドルフ、ただ1頭であった。しかし、この2005年に誕生したディープインパクトはこの記録に並び史上2頭目の無敗三冠馬となった。
その強さはまさに”衝撃”と称されるほどの凄さであった。そんな彼もとうとう古馬と対戦することになったのが、2005年のクリスマスに行われた有馬記念という舞台である。
これまで誕生してきた三冠馬がその年の有馬記念を制するというケースは過去に2度ある。1度目はシンボリルドルフである。彼は無敗の三冠を達成後、強行軍で挑んだジャパンカップでまさかの3着、 その時の勝ち馬カツラギエースを倒しての有馬記念制覇であった。
2度目のケースは1994年の三冠馬ナリタブライアンである。彼の強さもまた史上最強レベルのものであった。圧倒的な強さで三冠を達成し挑んだ有馬記念では、好位から競馬を進め早め先頭から決定的な強さを披露し優勝を 飾ったのだ。
そして、そんな先輩たちの後を追うようにして、この日ディープインパクトは暮れの中山に登場した。
彼はここまで未だ負けしらずの7連勝を飾っており人気もやはり圧倒的な1番人気に支持されていた。だが、この中間の出来に関してはいささか、これまでと違う点がいくつかあった。
まずひとつに1週前追い切りの動きがピリッとせず、ディープインパクト本来の素軽さが見られなかった点である。この動き自体はレース当週になってもそれほど変わることがなくやや不安な 出来ではあった。
そしてもうひとつ、当週に歴史的大雪などの影響で、急遽プール調整をする事になってしまった点である。競馬は、時に順調さというのも重要な勝負のファクターになる事がある。よって、 この変更も不安点のひとつであったのは確かだろう。
だが、今や社会現象となったこの馬にとって、やや不安な出来とは裏腹に”ディープインパクトは負けることが許されない”といった様相を呈する有馬記念となったのだ。
もちろん人気は一番人気、単勝オッズは1.3倍という圧倒的な支持、関係者には緊張が走った事だろう。
この有馬記念は全16頭の争いとなった。ディープインパクト対古馬という感じになったが、古馬の大将格は前年の年度代表馬ゼンノロブロイ、そして前走ジャパンカップで世界レコードのレースを ほぼ同タイムで駆け抜けたハーツクライであった。この2頭が横綱とするなら大関にあたる馬として、ここが引退レースとなるタップダンシチー、本格化後最高の出来と評判のデルタブルースが挙げられた。 この他の馬たちの中にも女傑ヘヴンリーロマンス、出来抜群のリンカーン、眠れる獅子のコスモバルクなどが犇いており、面子の揃った有馬記念という感じになっていた。
だが、人々の多くはディープインパクトの相手になるような馬がいるとは思っていなかったのである。それがたとえ、馬体重が菊花賞時よりもさらに4キロ減っていて異様であってもだった。
怒涛の歓声の中、スタートが切られた。 まず真っ先に先頭を窺ったのがタップダンスシチーと外枠発送のオースミハルカだった。ディープインパクトは後方につけていた。大方の予想では、中団に構えるのでは、といった話もあった為、 やや不安の歓声が鳴り響いた。結局ディープインパクトと武豊は最後方からの競馬になった。もちろんディープインパクトの末脚を信じての競馬だったであろう。
だが、ここで驚きの展開を見せた馬がいた。なんと先行集団の中に、強烈な追い込みを得意としていたハールクライとルメール騎手がつけていたのだ。しかも、ペースは思ったほど速くはならず、 傍目から見てもディープインパクトにとって喜ばしい展開とはならなかった。
全馬がスタンド前を通過していく。そして再び向こう正面へ向かってい各馬。 この時である。ディープインパクトが少しずつポジションを上げていこうとしていた。この時点でファンの歓声が起こった。
ポジションは後ろから4、5頭目あたりまで上がった。しかし、前との差はまだまだあった。ゼンノロブロイもこの近くにいた。この日12キロ増えていたゼンノロブロイであった。
先頭のタップダンシチーが3コーナーに差しかかった。
ディープインパクトが進出を開始、それにつれて大歓声という大歓声がスタンドから巻き起こった。4コーナーから直線へ向かっていく。
先に仕掛けたのはコスモバルク、先頭のタップダンスシチーの手ごたえはもはや無く、その外からハーツクライも仕掛けていた。そして、ディープインパクトも外から上がってきていた。手ごたえ自体は悪くないようだった。
そして直線の追い比べとなる。先頭に力強く立つコスモバルク、それを交わしてどうやら先頭に立ったハーツクライ、中からリンカーンも伸びてきていた。
さあ、ここからディープインパクトが突き抜けるぞ!そう思った。
だが、なかなかいつものディープインパクトの伸びが見られない。短い中山の直線も残り100を切った。
大ピンチだった。それでも内粘るリンカーンやコスモバルクといった古馬の上位クラスを圧倒する脚ではあった。だが、彼は勝つ事が使命付けられている馬である。
先頭はまだハーツクライ。ディープインパクトも追ってきたが...。
とうとう半馬身差をつめる事ができなかった。初めての敗戦である。 レース後、大歓声を送っていた競馬ファンから困惑した声が上がっていた。勝ったハーツクライのルメール騎手が拍手を要求しているようであったが、多くのファンは そんな気分にはなれなかったのだろう。誰もが信じられない英雄の敗戦に驚愕していた。
本来、日本の競馬ファンというのは例年の有馬記念などで本命馬が他馬に負けたとしてもそれなりに拍手を送ったりする人種だと思う。だが、このディープインパクトという馬は 皆の希望であり、これから来るディープインパクト伝説への夢、三冠馬はその年の暮れを締めくくってくれると...多くの思いで応援していた。よって、ややこの年に関して言えば違うとしかいいようがなかったのだ。
レース後、武豊はまさかという面持ちで引き上げてきた。そして何度も何度も「分からない、なぜ伸びなかったのか」と繰り返したという。そして、「今日は飛ばずに、走っていた」と 形容したという。ファン以上に武豊はショックを受けていたのかもしれない。
三冠馬となってその年の有馬記念を勝った馬は冒頭でもいったように2頭いるといった。しかし、無敗のままで出走したのはこのディープインパクトだけなのである。史上最強と言われる皇帝シンボリルドルフもジャパンカップで苦渋をなめた。 恐ろしいまでの強さを誇りルドルフを超えたか、といわれたナリタブライアンでさえ、その年を全勝で締めくくってはいない。
もしディープインパクトがジャパンカップを使っていたらなどとは言わないが、この有馬記念2着という敗戦の事実は、一見ネガティヴな面のみにうつるものだろう。しかし、これこそ踏み台なのではないだろうか。シンボリルドルフはジャパンカップで負け、 本当の意味で本物になった。ナリタブライアンは秋緒戦、内からスターマンにすくわれ、まさかの敗戦を経験し菊花賞での驚異的な三冠達成につながった。では、ディープインパクトはどうだ、という事になるのだ。
今回の敗戦はいろいろな不運も重なっただろう。疲労もあっただろう。それでも2着である。半馬身の2着なのである。それでも彼の能力は70パーセントくらいしか発揮されていないと感じずにはいられないのである。
彼の伝説は、ここから次章となるのだ。早くも次の年の天皇賞へ向かうという情報が入っている。来年は、おそらく阪神大賞典あたりからの始動となるだろう。そこから始まる衝撃は、世界へ通じるものと確信している。

着順馬番馬名性齢騎手時計3F
110ハーツクライ牡4ルメール2.31.935.0
26ディープインパクト牡3武豊1/2馬身34.6
314リンカーン 牡5横山典弘1 1/4馬身35.0
44コスモバルク牡4五十嵐冬樹1 1/4馬身35.8
513コイントス牡7北村宏司1/2馬身34.9
67ヘヴンリーロマンス牝5松永幹夫34.9
72サンライズペガサス牡7田中勝春1 1/4馬身35.1
83ゼンノロブロイ牡5デザーモ35.4
98グラスボンバー牡5勝浦正樹1/2馬身35.0
105スズカマンボ牡4安藤勝己34.9
1115デルタブルース牡4ペリエ3/4馬身35.6
129タップダンスシチー牡8佐藤哲三1 3/4馬身36.9
1312ビッグゴールド牡7柴田善臣2馬身35.9
1411オペラシチー牡4中舘英二36.6
1516オースミハルカ牝5川島信二1/2馬身37.1
161マイソールサウンド牡6本田優3馬身37.4

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