前年のクラシックで注目を集めた兄ブラックタイドの下として阪神競馬場に登場した、その馬は480kg以上ある兄とは違い、450kgそこそこの小柄な馬であった。しかし、その小柄な馬体のバランスという点においては類まれなものがあると見られていた。その馬の名をディープインパクトと言った。
ディープインパクトのデビュー戦である阪神5R2歳新馬で、彼は当然のように1番人気に支持された。
2番人気には、このレース後3連勝できさらぎ賞(G3)を制するコンゴウリキシオーが続いていた。
デビュー戦のゲートが開いた。スタートから先頭に立ったのはコンゴウリキシオーであった。ディープインパクト
は4、5番手の中団につけていた。ペースは前半1分5秒前後というスローペースである。
レースは3、4コーナーに差し掛かりペースが上がった。その時だ、中団でじっとしていたディープインパクト
は一気に外に持ち出し、しかも楽な手ごたえでまくってきたのだ。
先頭で逃げていたコンゴウリキシオーは、直線に入る前にあっさりとディープインパクトに捕まってしまった。
直線コースに向くと内からコンゴウリキシオーがもう一度盛り返そうと必死に脚を伸ばしたが、外の一頭はまるで次元の違う
末脚を武豊騎手が持ったままで繰り出して、これを全く許さなかった。そして、残り100mを切る頃にはさらに差は広がり
結局4馬身の差をつけたところがゴールだった。
その時、ただの2歳新馬の筈が何か底知れない馬の登場を知ったのである。後で知った話だが、この時の上がり3ハロンは33秒1
という恐るべき時計をマークしていたのだった。
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