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2007年クラシック世代上半期総括

先週の日本ダービーを持って今年のクラシック競走の上半期を終了した。この後は秋の菊花賞及び秋華賞(正式にはクラシック競走とは言わないが)を残すのみとなったがこのあたりで私的な今年のクラシック途中経過的展望を述べてみたいと思う。
まずは桜花賞、皐月賞、オークス、ダービーの上位馬を以下に記す。なおクラシック競走ではないがNHKマイルCもここでは含んで書いていく事とする。
 
  桜花賞 1着ダイワスカーレット、2着ウオッカ、3着カタマチボタン
皐月賞 1着ヴィクトリー、2着サンツェッペリン、3着フサイチホウオー
NHKマイルC 1着ピンクカメオ、2着ローレルゲレイロ、ムラマサノヨートー
オークス 1着ローブデコルテ、2着ベッラレイア、3着ラブカーナ
ダービー 1着ウオッカ、2着アサクサキングス、3着アドマイヤオーラ
 
  ここで赤文字で記してあるのが1番人気馬であるが、皐月賞、ダービーという牡馬のG1ではいずれも3着圏内に来れていなかった。
よって3連単は共に百万円を超える超高額配当となった。
正直言ってこれまでにないような大荒れの年となっており力と力の凌ぎ合いという競馬観とは異質の物であったように思った。
しかしながら今年のクラシック世代がレベル的に低いのかというと必ずしもそうとは思えない。
というより全体的な馬の出方としてはむしろレベル的にかなり高いのではないかと思っているくらいである。
まず活躍の目立った牝馬の方であるが、この世代の馬の出方は凄い。
まず実力ナンバーワンは何と言ってもウオッカである。
ウオッカの強さを見せ付けた最初のレースは昨年の2歳牝馬チャンピオン決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズ。
このレースで確勝級の実力馬であったアストンマーチャンを力の違いとしか思えないような内容で差し切った時、何と言う強い牝馬だろうと思い、2007年シーズンの牝馬はアストンマーチャンとウオッカが主力級で行くのは間違いないと思った。
しかし、12月の中京2歳Sで共にセンスを感じる新馬勝ちをしていたダイワスカーレットと牡馬アドマイヤオーラが対決。2歳の時点では単騎で行くとそこそこの強さがあるのかと思われたゴールドキリシマが楽に突き放されて2頭のマッチレースとなった。
この時の両馬は33秒台の強烈な脚を使っており明らかに相当な実力があるという事を証明していた。
軍配は先行したダイワスカーレットの方に上がったがアドマイヤオーラの実力も牡馬クラシックで侮れないと思われた。
これまでのクラシックの歴史を見てもこの時期に牡馬クラシックで主役に成り得る資質を持った馬を牝馬が倒すという事はそうそうあるものではないのだが、明らかにダイワスカーレットという牝馬は上記に割って入るだけの第3の牝馬と目す事ができた。(当時の日記にも書いたが) そして迎えたシンザン記念では実力が相当ある事をかなり分かり易い形で示してくれた。
牡馬2歳チャンプ決定戦の朝日杯FSで勝ちに等しい内容の2着としていたローレルゲレイロが得意の京都1600に出走してきたのだ。
人気はこの3つ巴だったがレースでは明らかにダイワスカーレットがアドマイヤオーラを待っているように仕掛け、今後の為に脚を計っているようなレースをしていた。結果的にはその作戦もありオーラの方に軍配は上がったのだが問題は3着馬ローレルゲレイロが2馬身半という決定的な差をつけれれていたという事だ。これによりアドマイヤオーラにしても相当な実力を秘めておりそれと互角の勝負をしているダイワスカーレットという牝馬は牡馬の一流級の力を持っている牝馬であるという事が分かった。
となると今度はダイワスカーレットとウオッカ及びアストンマーチャンとの実力比較である。
その実力比較はチューリップ賞で実現する事になった。
ウオッカにしても今シーズン1度叩いての出走で実力は十分発揮出来る状態。
極めて桜花賞に繋がるレースであると思われた。
レースはダイワスカーレットがまたしてもウオッカとの脚力の差を計っているようなレースとなった。
ところがである。勝負どころでウオッカが馬なりで動きダイワスカーレットに並びかけると追い出しにかかったダイワスカーレットを全く相手にしなかったのである。
これにはダイワスカーレットの安藤勝ジョッキーも驚きのコメントを残していた。
このレースによりウオッカという牝馬はとてつもなく強い馬である事が分かった。
少なくとも牝馬クラシックでは3冠間違いなしという感じがした。
しかし本番桜花賞では、なぜだかチューリップ賞程走らずダイワスカーレットに敗退した。
本来の資質としてはアストンマーチャンも両馬に引けをとらないがその気性が災いし3強の一角が崩れていた。しかしこの3頭は間違いなく例年の桜花賞主役級の馬たちのレベルかそれ以上である可能性が高いのは間違いないと思った。
NHKマイルCは雨で渋った馬場で行われ1番人気馬ローレルゲレイロが押し切ろうとした所をピンクカメオが差しきった。このピンクカメオも桜花賞に出走しておりここでは14着と大敗していた馬だったが思いもよらない成長を遂げるこの時期としては展開も向き騎手の好騎乗もあったにせよ、実際の実力の方も桜花賞時より向上していたのかもしれない。それは後のオークスでも5着に入線している事からも窺い知る事が出来るように思う。
そのオークスでは当週追い切り後ダイワスカーレットが熱発でまさかの回避。さらにウオッカはダービー出走を表明し、距離に不安のあるアストンマーチャンも含め春のトップ級が1頭も出走しないという事態が起こった。しかしオークストライアルのフローラSを力の違いで勝ったベッラレイアが登場。この3強に匹敵する程の豊かな資質を持っていると思われ本番では1番人気に支持された。しかしやや強気の騎乗だったベッラレイアを冷静に捕らえたのは桜花賞4着馬ローブデコルテと福永騎手だった。しかもこのレースは東京競馬場が改装される前のダービーレコード2分25秒3で走破されており、オークスレコードが記録された。結果的にローブデコルテが勝ち馬だがベッラレイアも勝ち馬と等しいか下手をすると内容的にこちらが上だったように思う。この秋はこの世代屈指の同級生牝馬との対決が予想されるがもう一段階の成長さえあれば勝ち負けまで持ち込める資質があると思われる。ローブにしてもそうだが次走の内容は注目に値すると思う。
ここまで2007年クラシック世代上半期総括として主に牝馬を中心に振り返ってみた。
ここでは触れなかったがウオッカが64年ぶりの牝馬によるダービー制覇という快挙を達成しており、そもそもダイワスカーレットと牡馬アドマイヤオーラとの力差を考えれば驚く事でもないのかもしれない。しかし牝馬が牡馬を倒すという事がいかに凄いかを過去のエアグルーヴしかりスイープトウショウしかりヒシアマゾンしかり、が伝えている。それを平然とやってのける今年の主役ウオッカはまさに怪物だろうと思う。それも過去に出てきた事がないほどの女傑である。世界競馬の歴史上には信じられないような馬もいたらしい。たとえば19世紀のハンガリーにはキンツェムという牝馬がおり、なんと54戦全勝という記録が残されているという。日本の競馬の歴史はまだ世界の中では浅い方の部類に入るだろうが昨年の有馬記念で有終の美を飾ったディープインパクトも含め、日本にも伝説的な名馬が出てきているのだと思いたい。 2007.05.29

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